もものかんずめ
。。。意外にも神妙な顔をしている。あんな父でも神妙な顔をするのか、と思った時、父の頬が光っているのが見えた。頬に汗が流れるはずがない。他の人からは見えないが、私の角席からだけは父の涙が見えたのだ。
東京に出て行っても自分の娘である。どんな遠くに行っても自分の娘である。しかしどんな近くに行く事になってもお嫁に行けば姓が変わる。もう自分の娘ではなくなるのだ。
私は父の顔が目にはいらないように体の向きをずらした。涙が流れないように深呼吸した。私がうつむいて、もう一度顔を上げた時、父はいつもの顔でニヤニヤしながら会場から出てゆく人たちを見守っていた。
さくら ももこ
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